単位の話(2)
最近計量の単位について雑談していて、現在国際的に統一された計量単系SIが日常の
生活の感覚と乖離していて、ピンとこないという話になりました。
以前に単位の話としてこのホームページに書いた時に国際単位系が馴染み難いと書き
ましたが、この機会にまた単位についてその後も思っている事を書きます。

昔から度量衡(それぞれ長さ.面積、容積、重さに対応)として一番身近な事の計量
単位が決められて、生活に密着して使用されてきました。
一方SIは単位系として学術的には各種の物理量相互の関係の理論付けを明確にした
ことは評価されますが、日常生活との関連が薄くなってしまいました。

まず、身近な長さの単位で見ていて気付いたのは、日本で使用されていた単位の
「尺」と欧州で使用されていた「フィート」がほとんど同じ長さであることでした。
(1.006尺=1フィート=0.3048メートル)
洋の東西を問わず身近な物作りにあたって使用される長さの単位としてはこの長さが
適当で使いやすかったからだ思われます。
建物の柱間隔を一間(6尺)として、そこに引き戸をつけると、入口巾が3尺弱と
なって、人間の出入りに丁度よい巾になります。
また、畳一畳は3尺x6尺で人間がゆったりと寝転ぶのに善い広さで、3畳ひと間は
ぎりぎり一人が、また4畳半は男女二人がなんとか生活出来る広さになるでしょう。
距離の単位として「里」(1里=3.927km)がありましたが、1里は人がほぼ1時間で
歩ける距離であり、10里はほぼ一日で歩く距離になるでしょう。
現在の長さの単位「メートル」は地球の北極から赤道までの距離を一万キロメートルと
して決められたものですが、日常生活とは無縁な味気ない決まり方です。
次に容積の単位で見ると、「合」(1合=180ml)があります。食事をするのに一食
あたり食べるお米の量がほぼ1合で、三人分のご飯を焚くなら3合が目安になります。
1年では一人が約1石(1石=1000合)を食べることになるので、1万石の大名は
約1万人の食事を賄えるお米の収穫がある土地の所有者として理解しやすいと思います。
お酒1合は普通の人が嗜む量であり、1升となれば大酒飲みの代名詞となっています。
技術的な方面の単位では、動力についての「馬力」(1馬力=0.746kW)がありました。
1馬力と云えば、ほぼ馬1頭が発揮する動力として頭の中で理解し、100馬力といえば
馬100頭が車を引っ張っている画面が想像出来ます。
また、圧力の単位のパスカルについては前回も書きましたが、1パスカルと云っても
ピンときませんが、1kg/cm2と書けば1平方センチの面積に1kgの物が載っている状況が
想像出来ます。
力の単位としては工学的にはkgf(キログラム重)という単位が主に使われていました。
これは平均的な地球上の場所で質量1kgの物体を支えるだけの力を単位としたもので
60kgfの力といえば60kgの人を支える力として実感できます。
ニュートンという力の単位では生活実感として受け止め難く、もしニュートンが今生きて
いたならば、単位としてその名前が使われたことは光栄に思うかもしれないが、リンゴが
落ちるのをみて万有引力の存在を発見した者として喜ぶかどうか疑問です。
熱量のSI単位でのジュールもカロリーと比べて実感しにくい。1カロリーは1グラムの水の
温度を1℃上げる熱量で、100カロリーなら0℃から100℃まで温度が上がる熱量として
頭の中で考えやすい。
1カロリーは約4.18ジュールで何とも中途半端な値になり子供に教えるにも難しいことに
なります。ただ、基本単位はジュールですが、カロリーについても推奨はされていないが
使用は認められています。
他にも角度の単位ラジアン(rad)があります。これも今までの「度」の併用が認められ
てはいますが、直角90度がπ/2(約1.57)となりますが、日常生活ではとても使う気に
なりません。
新しい単位システムのSIは大学の科学系の学生や企業の科学系の専門家の領域に適した
ものだと思います。技術系の私でも戸惑うぐらいですから、一般の人には「なにそれ」と
チンプンカンプンな話に聞こえるのではないでしょうか。

最近子供の理科離れが心配されていますが、計量単位が実生活の感覚と乖離していては、
物事の理解がより困難になり、理科離れを加速する要因の一つにならないかと心配です。
科学的には論理的に筋のとおったシステムであることは理解していますが、それを日常
生活に絡んだところにまで押し付けるのはどうかと思っています。
上記した例で分かるように、子供が見ている現実の生活と単位の結びつきが分かりやす
ければ物事の観察に楽しみか出て来るのではないでしょうか。今さら引き返すことも出来
ないでしょうが、日本で尺貫法とメートル法が長く併用されていた時代でも、換算表
さえあればそれほど不便だったとは思いません。
古い単位の計量器は計量法で販売を禁止されていますが、民間で個人的に使用するの
ならば許可してもよさそうに思えます。

余談になりますが、長さの基準はメートル原器をベースに、光が真空中を特定の時間に
進む距離を基準にするよう変更されたのに、質量の単位のキログラムの基準は、まだ
フランスにある国際キログラム原器になっていて、新しい定義の基準が出来ていない
のも奇妙に思えます。


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