想定外  
3月11日に東日本大震災が発生し、大きな津波が関東、東北、北海道の沿岸を
襲った。その想定を大きく上回る津波によって、人および建物などに甚大な被害が
あった。また、東電の原子力発電所も津波の被害を受け、非常用電源も使用不能と
なり炉の冷却が出来ず、放射能洩れもあって、現在も対応に追われている。

この災害に対して想定外の地震の大きさで、想定外の大きな津波の高さであり
想定外の大きさの被害となったとの報道や識者のコメントが多く見聞きされた。
色んな設備の計画では、起こりうる地震や津波の大きさなど前提として、それに
耐えるだけの強度や設置場所の高さなどを考えて設計される。
私も技術の立場にいる一人として、今回の状況から本当に想定外のことがおこった
ので致し方ないと言えるのかどうか、大いに反省すべきだと思った。

まず、起こりうる地震の大きさについては東電はマグニチュード(M)7.9を想定
していたと報道されていたが、今回の地震は最終的にM9はあったとされている。
このM9の地震は想定外であったのかどうかであるが、その後の報道などによると
大平洋周辺の国ではM9以上の地震は多く起っているとのことであり、原子炉周りの
重要な器機については、そのレベルの地震が発生することは想定しておくべきでは
なかったのかと思われる。

次に津波の高さについても東電の福島第一原発では、想定していた5.4mに対して
14m程度の高さの津波が来たと推定されている。
古い原発について耐震性を再検討する専門委員会で869年に起った貞観地震の時に
この程度の大きな津波が起っていたと推定されることが指摘されていたとの報道も
あった。これに基づくと、今回の津波の高さは想定外とは言えないようである。
また、津波の高さについては、町を津波から守る堤防の高さについても言えることで、
高さ10mの堤防が作られていた所にこれを遥かに越える20mもの高さの津波が襲って
町が壊滅してしまったことも起きている。
貞観地震のように千年以上前の例があっても高さ20mレベルの津波がくると想定して
20mもの高さの堤防を築く決心をするのは建設予算やそこでの日常生活などの面から
当時決断することは難しいことであったかと思われるが、千年に一度ぐらいの頻度
でも起きることは想定外とは言えないことである。
今後の復興計画を策定するに当たって、この点をどう解決していくのかを決断が求め
られる。

今回の地震災害の状況から、想定外という言葉が多く見聞きされたが、本当は想定外
では無くて、千年に一度ぐらいの危険度だからと、目をつぶって決めたことのように
思われる。従って想定外ではなく、この程度の地震、津波の大きさは想定内であるが
計画の前提外としていたと考えるのが真実でしょう。従って何時かは大地震が起って
大きな被害が発生することが有るだろうとのリスクが充分説明され、またそんな時に
如何に被害を最少に留めるかの対策を作っおいて、関係者に納得してもらっていたか
どうかである。

今回の事を契機に多くの人の生命財産に拘わる問題についてはその危険度で想定
されることはすべて明らかにして、何を前提に計画するかを明らかにして、想定外
との言い訳は出来ないようにするべきであろうと、技術に携わる者の一人として
思いを新たにしている。


ホームページに戻る                     2011.3.26.