進水式
三菱重工業の神戸造船所では最後となる商船の進水式が3月9日に行われたとの
報道を読んで、約60年前、まだ私が学生の頃に二回ほど、機会に恵まれて、
ここで行われた進水式を感激しながら見た事を思い出していました。
その時の船はいずれも大阪商船(現在の商船三井)の客船で、時代から云うと、
日本人のブラジルなどへの移民を多く送り出すのにも活躍した頃の船であり、
船名も「リオデジャデイロ丸」といった名前が付けられていたと記憶しています。

今、造船では韓国や中国に追い上げられて、価格競争も激しく、その為ここ
での最後の進水式になってしまったとの報道は、産業界の栄枯盛衰を又思わ
せるニュースの一つです。
この造船所は明治以来平成の今日に至る間に、約1600隻もの商船を進水
させた歴史ある工場なので、私も日本の繊維産業で働き、その繁栄から衰退
への歴史の中で、古い生産設備の撤去と工場の転換の仕事も経験しているだけに、
造船所で働いていた方々の、最後の進水式を見送る思いに共通する感慨があるの
ではないかと思って読みました。
勿論、日本の造船技術は世界では高く評価されているので、今後も製造拠点の
集約化海外展開で事業としては継続されていく方向である。

多くの進水式では船と船台を繋いでいたロープが斧で切断されると、何万
トンもある船の巨体が傾斜した船台の上を静かに滑り下りてゆき、船尾から
水の上に浮かんでいきます。その時に船首に取り付けたくす玉が割れて五色の
テープや紙吹雪が舞い、船首に書かれた船名を隠していたカバーも外される。
また、船首にはシャンパンのビンがぶつけて割られます。これは以前赤ワインも
使われていたのが、最近はシャンパンが多く用いられる様になったです。
ロープを切断する役目は多くの場合女性が担って行われ、私の見た進水式でも
女性でした。

このような華やかな式で新造船の将来の無事な航海が祈られますが、私などの
関係したプラントなどでも、設備が完成した時に、最初にスイッチをいれて稼働
する前に、始動式を行って設備の完成を祝うと同時に事故が無いように安全祈願を
行う事が多くありました。
その他、新しい道路や、橋、建物など多くのものの完成式典が報道されることが
ありますが、それらの中で、進水式が一番華やかで夢があるように思います。

いろいろと書きましたが、何と云っても、自分の関係した設備が動きだし、始め
ての製品が無事に生産され始められた時が、技術屋として一番の喜びである
ことを、進水式の記事を読みながら、昔見た進水式の情景を学生時代とは別の
感慨をもって思い出していました。


ホームページに戻る                     2012.3.26.