水の話
「日本人は、安全と水は無料で手に入ると思い込んでいる」と書かれたイザヤ ベンダサンの
「日本人とユダヤ人」という本が昭和46年に話題になり、当時、多く引用されていた。
当時と今とでは、日本人の考え方もすっかり変わって、安全も水も無料ではないと考える
ようになっていると思う。

3月16日から第3回世界水フォーラムが日本で開催されることもあり、水資源の問題に関する
記事が新聞などでも多く取り上げられるようになった。
日本では昔から「湯水のように使う」という表現があるように、また上記のように、水は無料で
幾らでも使えるものであるとの思いこみがあったのは事実である。
昔は川の水もきれいで、人口当たりの水量は豊富であり、各家庭の井戸や、共同の井戸もあって
自由に使えるという状況であった。勿論、年代によっては水飢饉もあったようであるが、平均的
には水に対しては考えが甘く、それが代々身についていて、いまでも水道の水をジャアジャアと
流しながら手を洗っている人が多いようである。

しかし、人口が増え、それが都市に集中してきたので水不足が問題になって来た。これも量害
一つだろうが、日本でも、渇水期には水道の断水騒ぎがしょっちゅう新聞に載るようになって
来ている。

平均降水量から言えば、日本には充分に水がある計算になる。しかし、ダムに全部を貯えて平均
的に大都市に流して、旨く利用することも実際問題としては出来ないのが現実である。
また、水量だけを考えると日本は海に囲まれており、大都市はほとんどが海に面しているので、
海水を利用出来れば水不足は解決することになるはずである。現実に、日本でも海水の淡水化が
行われるようになり水道水への利用が始まっている。
世界的にはサウジアラビアなど水資源の無い国では、すでに海水を大規模な設備で淡水化して
水道水として使用している。

海水の淡水化技術として、以前は蒸発法が多く採用されていたが、最近は逆浸透膜(RO膜)が
使用されるようになっている。これは海水に高い圧力をかけてRO膜を通すと飲料に適する
純度の水が得られることを利用するものであり、プロセスとして簡単で、省エネルギーにもなる
ことから大規模なプラントで20年前ぐらいから実用され始めている。
サウジアラビアにある世界最大のRO法による海水淡水化プラントでは一日12万8千トンもの
水道水が作られている。
2000年のIDAのレポートによると、RO法による海水淡水化プラントの規模でのトップ10の
半分が日本製の膜を使ったものであり、その造水量は一日約62万トンにもなる。
世界的な一人平均の水使用量100リットル/日で計算すると、620万人分の消費量を賄って
いることになる。その中で上記最大プラントのRO膜提供者が日本の東洋紡であり、造水量でも
東洋紡が世界一であることはあまり知られていないようである。
もう少し小型のプラントもあるので、総計では1000万人近い人の水道水を賄うだけの水量が
海水からRO法で供給されていると推定される。
また、国内最大のプラントになる福岡の海水淡水化装置(5万トン/日)にも同社の膜が採用
されている。今回の水フォーラムでも海水の淡水化技術が議論されることだろうと思う。

水問題では、まず、節水が先に来ることは勿論であるが、大都市や大きな団地などでは中水道の
普及も大事だと思う。水洗便所の水や雑用水に飲み水と同じ水質の水道水を使っているのは、
どう考えても無駄で、上記のような場所では、中水道の準備配管を義務付けて、逐次中水道を
整備し切り替えを進めていくべきだろう。
また、中水道の為の雨水の利用や排水のリサイクル技術の開発も大いに推進せねばならない。
3月18〜22日にインテックス大阪で水のEXPOも開催される。ここで新しい水処理の技術や
装置が展示されることを期待している。
入場は無料なので、多くの人に見てもらって水に関する問題点や技術動向を理解してほしいと
思っている。


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