膜分離技術 
先日の水のEXPOで膜分離技術が海水の淡水化ほか浄水設備、排水処理設備、超純水製造
などに多く利用されようとしている状況を見たので、膜分離について書いてみることに
した。
この技術については、専門書が出ているように、このようなホームページでは書ききれ
ないテーマなので、今回の展示をみて感じたことだけになります。

分離技術に用いられる膜の種類と除去、分離可能対象は下記のようになります。分離可能
サイズはイメージとして分かりやすいように大まかなラウンドの数字にしてあります。
単位μ(ミクロン)は千分の一ミリ
1:精密ろ過膜(MF)
  分離可能サイズと対象  0.1μ   病原菌、細菌類、超微粒子
2:限外ろ過膜(UF)
  分離可能サイズと対象  0.01μ  ウイルス、分子量10万程度の分子、タンパク質
3:ナノろ過膜(NF)
  分離可能サイズと対象  0.001μ  多価のイオン、分子量数百程度の分子(農薬等)
4:逆浸透膜(RO)
  分離可能サイズと対象  0.0002μ イオン、塩類
5:ガス分離膜(GSF)   
  分離可能サイズと対象  0.0001μ 水素、酸素、窒素、炭酸ガス、ヘリウム回収など
6:透析膜(DI)      
  分離可能サイズと対象  0.002〜0.01μ 目的に応じた物質を透過させその他と分離

上記の膜は中空糸の形態で使用されるものが多いが、日本の繊維メーカーやフイルムメーカが
主として製造しており、ROについては東洋紡、東レ、日東電工が、その他の膜ではクラレ、
三菱レーヨン、ユニチカ、旭化成などがあり、日本の優れた繊維産業での技術が、高機能
繊維の分野に生きていることは嬉しいことである。
中空糸の形態が多く使われるのは,外径200μぐらいの細い中空の糸であり、一定の容積中に
入る分離に使用可能な表面積が大きくとれるからであり、膜ユニット1立方メートル当たりの
膜面積は数万平方メートルにも達する。フイルムタイプでは数千平方メートル程度である。
(勿論これだけが評価基準ではないが)
最近、素材としてセラミックを用いた膜も開発されている。まだ価格的には高いようであるが
これも面白い材料であると思う。

これらの膜は目的によって最適のものを選んで使い分けされます。水処理では1から4の順に
小さい物質が分離出来ますが、膜面積当たりの透水量が減るため、同じ水量を処理するための
装置が大きくなり設備費も運転費も高くなるので、当然最適膜条件が考慮されます。
日本やアメリカで水道水の汚染で多くの患者が出て問題になった病原性微生物クリプトスポリ
ジウムは塩素滅菌でも死なない病原菌ですが、菌の大きさはMFでも充分除去出来るのでこの
目的であればMFの中でも圧損の少ない粗い目の膜が選択出来ます。

今回の展示で多く見られた、生物処理と膜分離を組み合わせた排水処理設備でも微生物で処理
しながら綺麗になった水を取り出すので微生物が除去出来て圧損の少ないMFを使えば充分の
ようです。同時に除去したいその他の物質がある場合はUF,NFとの組み合わせも出来るで
しょう。

1〜4の膜は圧力をかけて、溶媒(溶かしている液--水)を膜を通過させ、溶質(溶けている
もの--塩など)を濾し分けるものですが、透析の場合はほかの分離膜と少し原理が違う分離法
であり、人工腎臓などとして使用されています。
この場合はに血液中の必要成分は通さず、老廃物の尿素や尿酸のようなものを、膜を通して
圧力ではなく、濃度差で血液から透析液のほうへ移動させて腎臓の機能を代用させるもの
です。
なお、この場合透析液に人体に必要な成分を溶かしておき、透析液から血液中へ取り込む
ことも行われている。このDIの場合血液中の必要な成分は取られないようにするなど、最適の
膜を作る技術が難しいようである。
この分野でも日本の膜が多く使われており、東洋紡(約25%)と旭化成(約20%)の膜が
世界の約45%のシェア−を占めているようである。

先に水の話に書いたように海水の淡水化では日本のROが世界一になっており、電子工業
などで使用される超純水などにもROが多く使用されている。しかし、日本国内の浄水設備
ではMF,NFなどの実用化が少し遅れているようである。
フランスではNFを使った14万トン/日の浄水設備が動いており、世界でも数万トン/日の
NF,UF,MFを使った設備がかなり稼動している。
水問題が深刻なシンガポールでは、膜分離技術で排水を処理して水道水の使用しようとして
いる。
今回の水のEXPOでプラントメーカーが浄水設備や排水処理設備の技術を多くPRしていた。

最近テレビで活力が増すといって酸素濃度を高める空調機が宣伝されているのを見るが、
酸素濃度を高めた空気も膜分離で作られている。
また、最近話題の燃料電池車に使用される水素の分離、精製にもGSFが使用出来るなど膜
分離技術はまだまだ用途が広く展開される技術だと思う。
日本の優れた膜技術が、世界をリードしてさらに大きく広がることを期待している。


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