くろよん
秘境黒部峡谷の関西電力黒部川第四発電所とその水源としての黒部ダム建設の苦労話は、
171名の殉職者を出し、7年の歳月をかけての難工事の末に完成されたことが映画や
テレビのドキュメンタリー番組などにも取り上げられている事なので良く知られています。
私も技術屋として興味があり、一度行って直接見てみたいと思っていたのですが、今まで
機会が無く過ぎていました。
今回、念願が叶ってやっと黒部峡谷から黒部ダムをまわるツアーに参加することが出来
ました。
秘境と云われるだけの深い渓谷とそこに建設された巨大なダムとを見て、この計画に
携わった方々の苦労を良く感じることが出来ました。

初日は、ダム建設の資材を運搬するために作られたトロッコ列車に乗り、宇奈月から
黒部渓谷沿いに遡りました。途中眼下に見下ろす深い渓谷と何百メートルも切り立った
崖を見ていると、落差や水量から考えて水力発電所を建設するには最適の立地であることは
良く分かりますが、ただそれを実行するために乗り越えねばならぬ技術上の難かしさも
理解されました。

黒部川に発電所を作ることは高峰譲吉博士が大正6年に調査を開始されたとのことなので
90年も前のことになります。最初の発電所は大正13年に建設が開始されており、その
時にトロッコ列車も作られています。その線路沿いには人間用のトンネルが作られており
冬季の列車が運行出来ない時期に歩いて登るようにもなされていますが、それも大変な事
だと思われました。
その後川上に向かって逐次発電所の建設が進んでいますが、戦後の電力不足を解決する
ために、昭和31年に通称「くろよん」(黒部ダム/黒部川第四発電所)建設のプロジェ
クトが開始されました。
険しい渓谷をさらに遡り、標高1400メートルを越す高地にダムを建設することの難し
さは想像するに余りがありますが、それを越えて決断した関電関係者に頭が下がります。

二日目はバスで室堂まで登り雪の大谷の切り立った雪の壁の間を少し歩き、また、周りの
雪を頂いた山々の景色も堪能する事が出来ました。
そこからロープウエーとケーブルカーを乗り継いで黒部ダムに向かいました。

トンネルの中を通るケーブルカーを降りて、日本一の高さ186メートルの巨大なダムに
出るとその大きさに圧倒される思いでした。
また、ダムはその大きさだけではなく、アーチ型に湖に向かって彎曲しており、力学的
にも合理的で美しい形状をしていました。機械装置でも良く設計されたものは形体も美しい
ものが多いが、この黒部ダムも見た目にも安定感のある素晴らしい設計であると思いました。
従って、雪を頂いた山々に囲まれたダムと黒部湖は一つの景観として受け入れられるもの
でした。
人間の営みの中で自然との共棲の一つとして棚田の景観保全が、よく話題になっていますが
このダムもそんな共棲の一つとして評価しても良いのではと思いました。
また、現在問題になっている温暖化ガスの排出から考えてもクリーンなエネルギーである
水力発電を大切に守っていかねばならないでしう。

黒部ダムを離れて大町に向かう関電トンネルではこのプロジェクトで最大の難工事となり
ドラマでも取り上げられた破砕帯のところを通過しました。トンネルの中の破砕帯の場所に
標識が付けてありましたが、距離にしたら80メートルほどで、トロリーバスではあっと
云う間に通り過ぎる所の工事に7ヵ月の苦闘があったとは、当時の技術者や工事に携わった
方々の心労、苦労いかに大変であったか、頭が下がる思いでした。

今回のツアーは一泊二日の強行軍で、少し雨にも降られて寒さもありましたが、念願の
「くろよん」を訪ねることが出来、建設に携わった先人の技術屋の方々の苦労の一端にでも
触れる事が出来、満足して帰ってきました。


ホームページに戻る                        2007.5.26.