「はやぶさ」の帰還
小惑星探査機「はやぶさ」が約7年の歳月を経て地球に帰ってきた。
地球から約3億Km離れた小惑星「イトカワ」に着陸して岩石のサンプルを
採取して帰るとの当初の目的は完全には果たせなかったが、一応何らかの
砂埃などが入っていることが期待されるカプセルは無事に回収された。
持ち帰ったカプセルの内容物の確認については、これからの作業が残って
いるが、往復の間に起った幾多のトラブルを乗り越えてカプセルが回収された
ことは、日本の技術者のレベルの高さ、優秀さが証明されたことであり、私も
技術屋の端くれとして大いに感動した一人です。

この快挙については新聞やテレビ等でも大きく報道されていたので、皆さん
それぞれの感想を持っておられると思いますが、私も思ったことを少し書いて
みたいと思いました。

今回の成功のポイントは幾つか有ると思いますが一番に挙げられるのは目的に
対して適確なシステムを選んで計画された事だと思います。
中でも探査機の駆動エンジンにイオンエンジンを世界に先駆けて選んだことが
成功の鍵だったでしょう。「はやぶさ」の総飛行距離は約60億Kmにも及び、
当初4年の計画が7年という長期の飛行になったのに、その飛行を支え続けて
機能したのは、従来の化学エネルギー燃料ではなく、太陽電池でエネルギーを受け
ながら電気の力でキセノンをイオン化して噴出させて駆動力とするシステムです。
この方式によって大量の化学燃料を積む必要がなく、少ない材料で長期間の飛行が
可能になった。
この方式は理論上、省エネルギーの駆動方式である事が分かっていても、この
大プロジェクトに新しい方式を採用する決心をした責任者、担当者の決断力に
敬服します。
また、このシステムを採用するに当たって周到な準備をされていたことも大いに
評価すべきことだと思いました。
それは4基あるイオンエンジンが故障した時に、各エンジンの故障していない部分を
組み合わせて正常なエンジンとして使えるように計画してあったなど、安全策と
して多くの可能性を準備し、組み込んでいたことは新システムを採用するための
心構えとして学ぶべきことだと感じました。

私が二番目に思ったのは、「はやぶさ」の姿勢制御が乱れて地球との通信が不能と
なり、約2ヶ月間行方不明の状態になったが、必ず通信が回復する機会が戻ると
信じて、その間諦めずに通信の努力を続けることで機能回復に漕ぎ着けたことです。
何ごとも成功させるには、自分の技術を信じて諦めずに努力を続けることが必要で、
今回のプロジェクトグループの方々の諦めない努力も特筆すべきもので、多くの
開発に従事する技術者の手本になるものです。

その他にも「はやぶさ」が「イトカワ」に着地する際には、地球からの制御では
信号に時間遅れがあるため、「はやぶさ」に積み込んだ制御装置が自ら判断して
行動するロボット技術の応用や、カプセルが地球に回収される時に表面に発生する
約3千℃の高温から内部を守るための断熱材など多くの新しい技術の開発がこの
プロジェクトを成功させている。

「はやぶさ」が最後にカプセルを地球に向けて放出したあと、その本体は大気圏に
突入し燃え尽きて役目を果たしたところも多くの人の心を打ち、非常に特殊な科学
分野の研究成果でありながら人それぞれに大きな感動を残したことであった。


ホームページに戻る                   2010.6.26.