ゲルの話し
1:まえがき
  ゲル研究の第一人者であったMITの田中教授が亡くなられたとの記事に
  その業績についての記載があった。
  たまたま、最近の仕事でゲルに関係があり、ゲルについて少し本を読んだり
  したので、野次馬的にゲルについて書いてみたくなった。

2:ゲルってなんだ
  専門家は良く知っているが、ゲルといってもよく知らない人も多いかとも思う。
  しかし、改めて見てみると、身の回りにはずいぶん多くのゲル状の物があり
  便利に利用されていることが分かる。
  古くはトコロテンから寒天、ゼリー、豆腐、ジャム、クリーム、練り歯磨、
  絵の具、マヨネーズなどは皆ゲルの仲間である。
  もともと、液体のものに、微細な個体や、液体が分散することで、流動性が
  なくなり、個体のようになったものである。
  寒天、ゼリーなどは個体が分散したもので、クリーム、マヨネーズなどは液体が
  分散したものだ。

3:ゲルの利点、面白さ
(1)保水性
  ゲルは99%以上の液体を含んでいても、流動しないものもある。
  寒天ゼリーは条件によって、99.8%の水分でも寒天に出来るという(通常99%)
  たった0.2%の固形物を含んだだけで液体が個体のようになるなんて、不思議におもう。   
  最近の紙おむつには、高分子吸水体が入っているが、これは、自重の100倍以上の
  水を吸い込んでしまう。生理用品でも同じだが、このような製品が出来たことで
  生活に大きな利点がもたらされたと思う。

(2)揺変性(チクソトロピー)
  絵の具、ペンキなどはチューブの入っているとき、塗り付け時、刷毛でこすらない
  時には、流動性が無く垂れないで、刷毛出で広げると液体のように、広く塗り付け
  られることで、使いやすくなっている。
  マヨネーズなども静かに置いていると流れないが、チューブから押し出す時は流れ
  出てくれることで使いやすい物性になっている。
  このように、力を加えると流動するが、力が加わっていないと個体のように、流れない
  性質が、揺変性で、この性質を利用したものも、身の回りに多くみられる。

(3)可逆性
  寒天のように、乾燥すると水分が飛んで、個体になって残り、それを水に浸けると
  またもとの寒天ゼリーになる。
  一方、蛋白質のゲルのように、もとに戻らないものもある。これは分子が毛鞠状の
  構造だったものが、直鎖状に伸び、それが、絡まってしまって戻れないらしい。

(4)膨潤圧
  ゲルが含んでいる水分を、圧力をかけて押し出そうとしても少々の圧力では無理で
  ある。
  ゲルが水を吸い込時に発生する圧力を膨潤圧と呼ぶが、此の圧力は1000気圧にも
  なることがあり、容器の中に乾いた可逆性ゲルを入れて水を吸わせると、容器を
  破壊してしまう。この力を利用すれば、岩でも破壊することができる。
  凹んだ缶を膨らませるのに、豆を入れて水を注いでおくと、豆が膨潤して元に戻す
  事が出来る。

(5)食品
  食品には多くのゲル状のものがあると言うより、ほとんど全てゲルである。
  そのゲルの状態の差が食感におおいに関係している。
  豆腐の絹ごし、もめんごしなど食品ごとの微妙な歯触りなどは、食品を作る方々の
  一番の技術の見せ所だろう。

4:最近の仕事とゲル
  最近ゲルに関連した仕事が二つあった。
  その一つは、染色に使われた残糊の廃棄処分の問題である。これも絵の具のような
  性質のゲルで扱い難く、そのまま廃棄すると、環境汚染になるので、何とかしてほしい
  とのテーマであった。
  もう一つは、最近開発が進んでいるリチュウムポリマー電池に使われるゲルポリマーを
  電極に真空含浸するのがテーマである。
  いままで、ゲルには仕事で関係することが無かったので、ゲルに興味を持つことに
  なったが、ゲルがこんなに、身近に多くあることは、新しい発見であった。


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