古代の遺跡から出て来る石の道具から、縄文時代にも粉を作ることが行われていたことが
知られています。木の実などをを粉にして食べていた訳ですが、先日の新聞記事で、中国
青海省の遺跡から4000年前の古い麺が発見されたことが報じられていました。麺を
作るには当然粉末を作る技術があることが必要で、人類は食べ物を作る上で粉体技術を
早くから持っていたようです。
粉を作るのに石臼がありますが、戦後の食料難の時代には、多くの家庭が石臼を持って
いて、家庭でトウモロコシなどを粉にして食べていました。私も家の石臼で色んなものを
粉にするのを手伝ったことを思い出します。
左手で材料を少しずつ供給しながら、右手で石臼を廻して粉にしましたが、供給速度と
回転速度のバランスで粉のサイズが細かくなったり粗くなったりするのがよく分かり
ました。
身の回りでも食品以外に粉体をベースにして作ったものは沢山あり、女性の化粧品
(白粉など)、印刷インク(顔料ベースのもの)、コピー機のトナー、ペンキ、道路の
白線、黒板に使うチョーク、歯磨き粉、洗剤など数え切れないほどです。これらの用途
では粉のサイズがその製品特性に影響が大きく、如何に細かいサイズの粉体を作るかと
いう製造技術が望まれています。
粉を取り扱うのは、先月書いたように、粉の種類、サイズ、形、水分などで難しさが
全く変わってくるので、今回の展示でも粉体のハンドリング技術に関連するものも沢山
ありました。
色んな粉体処理技術の中で、今回特に目についたのはナノメートル(nm:10億分の1
メートル)サイズの粉体に関する技術でした。
私が学生時代に習った粉砕機では数ミクロン(μm:100万分の1メートル)程度の
粉体が出来るものが限界であったと記憶していますが、技術の進歩はすばらしいもの
だと感心しました。
最近はいろんなところでnmスケ−ルの技術が応用されようとしています。粉体のサイズが
小さくなるということは、物質単位重量当たりの表面積が大きくなるということで、1mm
角の粒1個の表面積はたった100万分の6平方メートルですが、これを10nm角の粒に
分割すると、粒子の数は1015個になり、その総表面積は0.6平方メートルと10万倍に
なります。比重1の固体に換算とすると1gあたり600平方メートルですから、細かい
粒子にすると如何に大きい表面積を持つかが分かります。
従って、表面積が影響するような現象(反応、吸着など)の場合、粉体にすると大きく影響
されることが想像出来ます。
そんなことから表面積が大きいことが有効になる、ナノサイズの粉体を応用した技術開発が
進められていることが、展示会での各社の力の入れようから感じられました。
表面積が大きい事で商品化されている身近なものでは、使い捨ての懐炉があります。この
中に入っている粉末の鉄は空気中の酸素と反応して(燃えて)発熱することで懐炉になり
ます。これは細かい粒子にする事で、空気と接する表面積が増えて大量の反応が起ることに
基づきます。同じ重量の鉄の棒では空気に接する面積が小さいので空気との反応による
発熱量が少なくて懐炉にはなりません。
また、最近資源問題から、石炭を燃やすボイラーが復活していますが、昔の粒状炭を燃やす
のではなく、粉状炭を燃やすようになっています。これも粉状にすることで相対的に
表面積が増えて燃焼速度が早くなることと、粉状にすることでハンドリングが容易になる
からです。
但し、粉状にすることにより燃やし易くなるのはよいのですが、微粉になると急激に燃え
条件によっては爆発(粉塵爆発)することがあるので、いろんな微粉を取り扱う場合には
充分注意が必要です。
最近、電子産業などでは生産環境として微細なゴミの存在が問題になって、クリーン
ルームの中で物作りをせねばならないことが多くなっており、ミクロなゴミを除去する
ための、nmサイズのゴミも除去できる高性能フィルターもいろいろと開発されています。
幾つかの例で、粉体技術のことを書きましたが、粉体工業だけをテーマに展示会が開かれる
ほど粉体を対象とした技術が多様化し、広い産業分野に関連していることが分かります。
いろんなナノサイズの粉体を応用した技術開発も含めて、多くの粉体関連技術の開発が進め
られ進歩していることを感じました。