泡の話(1)

技術屋は、流れに浮かぶ‘うたかた’(泡沫)を見て、人の世の移ろいなどについて書いた
昔の人のようにはゆかないが、技術屋として泡に関して経験したことなどを書いてみたい。

泡について子供の頃の想い出してみると、母親の手伝いをして、卵の白身を泡立てたり、
カルメラ焼を作ったり、風呂場で石鹸の泡をいじったり、シャボン玉で遊んだりしたこと
などが泡との出会いだったと思う。

卵の白身の泡立てはボウルに入れた白身を針金を曲げて束ねたような泡立て器でかき混ぜて
いき、時間とともに細かい泡が増え、流動性の白身がだんだん流れなくなり、最後に泡立て
器で持ち上げると、泡がとんがった山のようになって形を保つようになっていくのが、面白
かった。

理屈を言うと、卵の白身に適当な分子特性があるので、薄い膜になった時の膜強度が適当で、
安定な泡が出来やすく、その時、液体の量に対しての表面積が非常に大きくなると、膜の
表面張力によって液体の重量全部を支えることが出来るようにまでなるからであろう。

カルメラ焼きは、玉杓子にざらめ砂糖を入れ火鉢の上でかき混ぜながら溶かしていき、少し
こげた飴状になった時に重曹を入れてかき混ぜ、泡立って盛り上がった時を見計らって冷やす
のだが、すぐしぼんでしまって、なかなか旨く盛り上がったものが出来ず悔しかったのを思い
出す。砂糖が飴状になり、泡を安定に包み込んだところで、其の状態を素早く冷却固化させる
タイミングが難しかったと思うが、ほかに何か旨く作るノウハウがあれば教えてほしいものだ。

シャボン玉では、昔は石鹸を溶かしてストローで吹くという簡単なことしかしていなかったが、
最近、孫のシャボン玉セットをみると、ストローもあるが、いろんな吹き口の形状で、二重
三重のものが出来たり、多くの泡が一度に出来たりと面白くなっている。シャボン玉の液も、
安定な泡が出来るような組成が研究されているようだ。
そのような、シャボン玉液の開発のお陰だと思うが、テレビなどで人間を包み込むような
大きな泡を作っているのも見られるようになった。

私が最近使いだしたものに、発泡タイプのヒゲ剃りクリームがある。今までペースト状の
ものを使っていたが、発泡タイプにしてみて、少量のものを広い面積の塗り付けるのにこの方が、
合理的であると感じている。
テレビで整髪剤や髪染め剤を発泡タイプでやっているのを見かけることが多い。髪の毛のように
大きい表面積のものに少量のものを塗り付けるには、発泡させて見かけの体積を増やすことで旨く
行う事が出来る。

仕事の上でも同様な経験をしているが、不織布に樹脂加工をするのに、泡加工の方式の設備を
作ったことである。
不織布にかぎらず、繊維製品に染色や樹脂加工をするとき、繊維は上記毛髪と同様に大きい
表面積を持っているので、泡を立てて、見かけの体積を増やした状態で染色や加工をすることで、
実質少ない量の処理液で、広い面積の加工が出来る。
同じ体積の液にすると、水で薄めて処理することが必要で、あとでその水を蒸発させ、乾燥する
ためのエネルギーが多く必要になる。従って、泡加工の方式は省エネルギーのプロセスになって
いる。
                                    (来月に続く)


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